脳はぼんやり時間に整理をする──スマホ認知症を防ぐには

「最近、人の名前がすぐに出てこない」「集中力が続かない」。そんな感覚に心当たりはないでしょうか。私自身、ニュースで「スマホ認知症」という言葉を目にして、少しドキッとさせられました。

一日のうち、スマートフォンに触れている時間を数えてみると、思いのほか長いことに気づきます。今回はその記事をきっかけに調べたことを、自分なりに整理してまとめてみました。とくに「脳が休まる時間とは何か」という点に注目しています。

1. スマホ認知症とは何か

スマホ認知症とは、スマートフォンやパソコンの過度な使用にともなって、物忘れや集中力の低下といった認知機能の低下が起きるとされる状態を指します。より身近に啓発しやすいよう「スマホ認知症」と名付けられたもので、医学的な正式の病名として認められているわけではありません。海外では「デジタル認知症」として研究の対象になっているとされています。

一般的なアルツハイマー型の認知症とは、いくつかの点で異なります。大きな違いは、スマホ認知症は症状を自覚できる場合が多く、そして進行はしないという点です。主な対処方法は、薬ではなく生活習慣の改善が中心になるとされています。

東京都内にはこの状態を専門に扱う外来も開設されており、月に30〜40人程度が訪れているという報道もあります。特に目立つのが、30代を中心とした働き盛りの世代だそうです。仕事でスマホを長時間使う人ほど、無関係ではいられないテーマだと感じました。

2. 脳は「ぼんやり」で情報を整理している

では、なぜスマホの使いすぎで脳が疲れるのでしょうか。鍵になるのが「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」と呼ばれる脳の神経回路です。

DMNは、車でいえばアイドリングの状態にあたります。私たちがぼんやりと過ごしているときに働き、その日に受け取った情報や記憶を整理してくれる役割があるとされています。つまり、何もせずぼーっとしている時間は、サボっているのではなく、脳が裏側で「片づけ作業」をしている時間だということになります。

ここが私にとって一番の発見でした。意識して「整理しよう」と考えなくても、ただ休んでいるだけで、脳が勝手に情報を整えてくれる。机の上に積み上がった資料を、夜のあいだに誰かが自動でファイリングしてくれているようなイメージです。

ところがスマホによって絶えず情報を受け取り続けると、脳はこの整理が追いつかなくなります。結果として、脳のなかが整理されない情報であふれた「ごみ屋敷」のような状態になり、疲弊してしまうと説明されています。

3. 「ぼんやり」に該当する時間・しない時間

そこで気になったのが、「どこからが本当のぼんやり時間なのか」という線引きです。ここを取り違えると、休んでいるつもりがまったく休めていない、ということになりかねません。

ポイントは、外部からの情報入力が止まっているかどうかです。映像・音声・通知といった刺激が入ってこない、空白の時間こそがDMNの出番になります。下の表に整理してみました。

ぼんやりに該当する(脳が整理できる) 該当しない(情報入力が続く)
散歩中にスマホを見ない SNSをスクロールする
入浴中(スマホを持ち込まない) ショート動画を次々と見る
窓の外をぼーっと眺める だらだらとYouTubeを見る
画面を見ずに横になる ニュースアプリを読み続ける

こうして並べてみると、私たちが「休憩」だと思っている行動の多くが、実は右側に入ってしまうことに気づきます。

4. なぜ”だらだらYouTube”は休息にならないのか

個人的にもっとも意外だったのが、だらだらと動画を見る時間が「ぼんやり」には該当しない、という点でした。なんとなく頭を使っていないので、休んでいる気になっていたからです。

しかし、能動的に集中して見ていなくても、画面では映像が次々と切り替わり、音声やテロップが流れ続けています。さらに、見終わるころには次のおすすめ動画が表示され、自然と視聴が続いていきます。つまり脳は、休むどころか情報を受け取り続けている状態にあるわけです。

「頭を使っていない=休んでいる」という感覚と、脳科学でいう「DMNが働く休息」とは、別物だということになります。受け身であっても、入力が止まっていなければ、脳の片づけ時間にはならないのです。

5. 今日からできる「ぼんやり時間」の作り方

とはいえ、スマホを完全に断つのは現実的ではありません。大切なのは、一日のなかに意識的に「空白の時間」を取り戻すことだと感じました。私が取り入れてみようと思ったのは、次のような小さな工夫です。

まず、信号待ちやエレベーター、トイレといった「すきま時間」に、反射的にスマホを取り出すのをやめてみる。次に、入浴や散歩にはスマホを持ち込まない。そして、寝る前の数分間は画面を見ずに横になる。どれも特別な道具はいらず、今日から始められるものばかりです。

こうした空白の時間を、脳の整理タイムとしてあえて確保する。それだけで、散らかった頭のなかが少しずつ片づいていくのかもしれません。

おわりに

スマホ認知症は進行するものではなく、生活習慣の見直しで対処できるとされています。だからこそ、症状を自覚したり「最近どうも頭が重いな」と感じたりしたときが、距離を見直すよいタイミングなのだと思います。

便利な道具であることに変わりはありません。上手に付き合いながら、一日に少しだけ「ぼんやりする時間」を意識して取り戻す。それが、これからの自分への小さな投資になるのではないかと感じています。