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3Dプリンタのフィラメントは湿気を吸うと造形品質が落ちます。表面がざらついたり、ノズルから「パチパチ」と音がしたり、糸引きが増えたりと、症状はさまざまです。そのため、使わないときの保管環境が地味に効いてきます。
今回は、その保管庫に入れる除湿剤を見直し、シリカゲル用の容器を3Dプリンタで自作しました。
フィラメント保管は27L防湿庫にまとめている
私はフィラメントの保管に、ナカバヤシ製の27L防湿庫を使っています。スプールを6本まとめて入れられるサイズで、購入した経緯は以前の記事にまとめました。


Bambu Lab A1のフィラメント保管に防湿庫を導入した話
庫内の湿度は扉を開け閉めするたびに上がるので、除湿剤を入れて管理しています。この除湿剤を何にするかで、これまで何度か迷ってきました。
モバイルドライは乾燥中に防湿庫が無防備になる
最初に使っていたのが、繰り返し使えるタイプの除湿剤「モバイルドライ」です。吸湿したらコンセントにつないで加熱し、水分を飛ばして再生できます。使い捨てにならないのが利点で、これは今も併用しています。
ただ、2点だけ気になる部分がありました。
ひとつは価格で、5,000円近くします。予備をもう1台買って交互に使うという手もありますが、さすがに気軽な出費ではありません。
もうひとつが再生時間です。取扱説明書には4〜5時間電源につなぐようにと書かれています。その間、当然ながら防湿庫の中は除湿剤が抜けた状態になります。半日近く無防備になるというのは、湿度の高い時期にはやや心もとない状態です。
使い捨ての除湿剤にも抵抗があった
そこで補助として試したのが、ハクバの「キングドライ」です。3パック入りで600円少しと安価で、カメラ用品として定番の製品になります。
ところがこれが、思っていたより早くパンパンになりました。吸湿すると袋が膨らむので状態は分かりやすいのですが、そのたびに捨てて買い直すことになります。安いとはいえ、消耗品が増え続けるのは気持ちのいいものではありません。
結局のところ、繰り返し使えて、なおかつ安価なものが欲しいという話になります。
繰り返し使えるシリカゲルを選んだ
行き着いたのが、バラ状のシリカゲルです。吸湿しきっても電子レンジで加熱すれば再生でき、500gで1,300円程度と、繰り返し使える除湿剤としてはかなり安くつきます。
製品の比較と選定については、こちらにまとめています。
Bambu Lab AMS 2 Proの湿度対策、市販シリカゲルを比べて選んだのはMonotaRO製
決め手は2つでした。ひとつは全ての粒が青く着色されていること。吸湿するとピンクに変わるので、どこまで使えているかがひと目で分かります。もうひとつが粒径で、4〜8mmと大きめです。容器の網目からこぼれる心配がありません。
入れる容器がMakerWorldで見つからない
シリカゲルが決まれば、次は入れ物です。バラ状なので、通気性のある容器に詰める必要があります。
MakerWorldで探せば何かしら見つかるだろうと思っていたのですが、これが意外と難航しました。
多かったのが、AMS内部に入れる小型の容器です。容量が数十mLしかなく、27Lの防湿庫に入れるには力不足でした。
もうひとつ気になったのが、網目のサイズが分からない点です。多くのモデルでは、網目が形状データとして作り込まれているのではなく、スライサーのインフィルパターンを表面に露出させて作られています。この方式だと、スライスしてみるまで実際の目の大きさが確定しません。粒径4〜8mmのシリカゲルを入れるのに、目が大きすぎればこぼれますし、小さすぎれば通気が落ちます。
形状も丸い筒状のものが目立ちました。丸型は側面全周から空気が入るので悪くはないのですが、深さ方向に粒が重なるぶん、層の中ほどまで湿気が届くのに時間がかかります。
PETGで容器を自作することにした
既存のモデルに納得できるものがなかったので、Claudeに相談しながら自分で設計することにしました。3Dプリンタを持っている以上、寸法が合わないなら作ればいいという話になります。
設計方針として決めたのは次の4点です。
ひとつめは、平たい形にすること。粒の層を薄くすれば、どの粒も表面に近くなり、吸湿の進み方が全体で揃います。
ふたつめは、網目を形状として作り込むこと。インフィルに頼らず、スロットの幅と長さを寸法で指定しました。スロット幅はすべて3mmです。ただし後述の追記のとおり、この幅では割れた粒がこぼれます。
みっつめは、材質をPETGにすること。PLAはガラス転移温度が約60℃で、乾燥用途では変形が心配です。PETGなら余裕があります。
よっつめが、材料を使いすぎないことです。最初の設計案は壁厚5mmでしたが、乾燥剤を入れるだけなら2mmで十分な強度があります。壁を薄くしたことで、フィラメントの使用量を半分以下に抑えられました。
最初の設計は蓋が閉まらなかった
最初に作ったのは、蓋を落とし込んでスナップ爪で留める形でした。ところが印刷して組んでみると、爪がまったく押さえになりません。蓋が浮いたまま止まってしまいました。
原因は2つありました。
ひとつは、爪の掛かり量を0.45mmしか取っていなかったこと。FDMの実用公差は±0.2mm程度あるので、印刷誤差に埋もれてしまう寸法でした。
もうひとつが、爪と受けのどちらにも斜面がなかったことです。水平面どうしが真正面から突き当たるだけで、蓋を押しても腕が外側へ逃げません。これでは閉まらないのが当然でした。
そこで蓋の方式そのものを見直し、ヒンジで跳ね上げる形に変更しました。爪が摩耗しても機能を失わず、蓋が本体から離れないので、電子レンジまで運ぶときに落とす心配もありません。
合わせて底面にも通気スロットを入れました。当初は防湿庫の棚に接するからと開けずにいたのですが、塞いだままでは材料の無駄ですし、縦に立てて使う選択肢も残しておきたかったためです。底板1mmを抜いたぶんで、ヒンジとラッチの増加分を相殺できました。
できあがった容器の仕様
完成したのが、本体外形100 × 100 × 高さ16mmの平たいトレイです。蓋を載せた全体寸法は、ヒンジとラッチの張り出しを含めて100 × 108 × 高さ18mmになります。
内寸は96 × 96mm、深さ15mmで、内容積は約138mL。シリカゲルにすると約95gが入ります。
通気口は蓋・底面・側壁の3面に設けました。蓋と底面は幅3mm × 長さ25mmのスロットを千鳥配置にして開口率24%、側壁には高さ3mm × 長さ10mmのスロットを上下2段に入れています。スロット幅はすべて3mmなので、粒径4〜8mmのシリカゲルがこぼれることはありません。
ラッチは、本体側を「造形板から立ち上がるボスに窓を開ける」構造にしました。爪が掛かる面が窓の上辺、つまりブリッジの下面になるので、宙に浮いた突起と違って垂れません。爪の下端とボスの上端には45度のテーパーを付けてあり、蓋を押し下げると腕が外へ0.7mm逃げて窓に落ちます。


さらに、腕を根元から爪に向けて内側へ0.25mm傾けました。組んだ状態で爪が常に窓の奥へ押し付けられるので、印刷誤差で掛かりが浅くなりません。実際に印刷したところ、カチッと入って抜けない手応えになりました。
1セットあたりのフィラメント使用量は約44gです。


作成した3MFファイルを公開します。推奨印刷設定や、ヒンジとラッチの調整方法をまとめたREADMEも入れてあります。
ダウンロードの前にお読みください
本データは個人が趣味で設計したものです。ダウンロードおよび使用は、すべて自己責任でお願いいたします。印刷の失敗や寸法の誤差、本データの使用により生じたプリンタ・フィラメント・保管物への損害について、当方は一切の責任を負いません。除湿性能を保証するものでもありません。
シリカゲルの再生で電子レンジを使う際は、容器ごと加熱しないでください。加熱しすぎは発火や破損の原因になります。詳しい注意事項はZIP内のREADMEに記載しています。
※ このデータはスロット幅3mmのため、バラ状シリカゲルの保持には適しません。記録として公開を続けています。実用には改良版をご利用ください。
シリカゲル容器 3MFデータをダウンロード(ZIP・約1.1MB)
2個入れて様子を見る
27Lの防湿庫には、この容器を2個入れて運用してみます。シリカゲルは合わせて約190g。防湿庫の離れた位置に置けるので、庫内の湿度ムラも減るはずです。
モバイルドライは引き続き併用します。再生で4〜5時間抜けている間も、シリカゲルのトレイが残っていれば庫内が無防備になりません。この組み合わせなら、これまで気になっていた点は解消できそうです。
これから確かめたいのは2つです。粒の色がどのくらいの期間で青からピンクに変わるのか、そして再生の周期がどの程度に落ち着くのか。青い粒が全面に見えるので、経過は観察しやすいと思います。
結果が出たら、改めてレポートします。
【追記】この容器には実用上の問題がありました
実際にシリカゲルを充填したところ、割れた粒や規格外の小粒がスロットからかなりの量こぼれ落ちました。粒径4〜8mmという表記に対してスロット幅3mmなら大丈夫と考えていましたが、判断が甘かったことになります。
スロット幅を1.5mmに変更し、容量も倍にした改良版を作成しています。これから印刷される方は、こちらをご覧ください。


